「チ。-地球の運動について-」というアニメ、マンガを見たことありますか?
15世紀のヨーロッパを舞台に、天動説が絶対だとされる時代において、命をかけて地動説を証明・継承しようとする人々を描いたヒューマンストーリーなのですが、非常に引き込まれる内容でとても面白かったのです。
そして、宇宙の神秘を感じるとともに、この宇宙や地球がどうやってできたのかを知りたくなりました。
地球は、最初から青い惑星として生まれたわけではありません。
今、私たちが立っている地面も、体の中にある酸素や炭素も、地球の中心にある鉄も、もともとは宇宙のどこかで作られた原子でした。
では、その原子は、いつ、どこで生まれたのでしょうか?
ビッグバン直後の宇宙には、岩石も水も鉄もありませんでした。
最初にあったのは、ほとんど水素とヘリウムだけです。
そこから星が生まれ、星の内部で新しい原子が作られ、星の死によって宇宙空間へばらまかれました。
そして、その原子たちは分子になり、鉱物の粒になり、宇宙のチリになり、何度も衝突をくり返して、やがて地球になりました。
この記事では、地球の誕生を「原子と分子の旅」としてたどります。
いつ、何が生まれ、何が集まり、どうして地球という惑星になったのか。
地球の誕生を辿ってみましょう。
第1章 最初の宇宙に「地球の材料」はなかった

地球の材料をたどるには、まず宇宙の始まりまで戻る必要があります。
現在の宇宙論では、宇宙は約138億年前に非常に高温・高密度の状態から膨張を始めたと考えられています。
いわゆるビッグバンです。
ただし、ビッグバン直後にすぐ星や惑星が誕生したわけではありません。
地球も、太陽も、岩石も、水も、鉄も、まだ存在していません。
初期の宇宙は、現在の私たちが知っている「物質の世界」とはかなり違っていました。
温度が高すぎて、原子が安定して存在できなかったからです。
原子とは、中心にある原子核と、その周囲にある電子からできています。
しかし、宇宙が非常に熱い状態では、電子は原子核に落ち着いて結びつくことができません。
原子としてまとまる前に、ばらばらの粒子として飛び回ってしまいます。
つまり、宇宙の最初期には、地球の材料どころか、原子そのものもまだ安定して存在していなかったのです。
ここが最初のポイントです。
地球の誕生は、惑星ができる話である前に、まず「原子が存在できる宇宙になる」話から始まります。
第2章 宇宙誕生から数分後、水素とヘリウムの原子核ができた
宇宙が膨張すると、温度は少しずつ下がっていきます。
すると、ばらばらだった粒子が結びつき、原子核が作られるようになります。
宇宙誕生から最初の数分のあいだに、主に水素とヘリウムの原子核が作られました。
NASAの資料でも、ビッグバン後の最初の数分で水素、ヘリウム、わずかなリチウムが作られたと説明されています。(cosmicopia.gsfc.nasa.gov)
ここで生まれた水素とヘリウムは、宇宙の最初の基本材料です。
しかし、この段階ではまだ「原子」ではありません。
なぜなら、原子核のまわりに電子が結びついていなかったからです。
原子核はできたが、原子はまだできていないという状態です。
この違いは細かいかもしれないですが、地球誕生を原子の視点で見るうえでは重要です。
地球を作るには、原子が必要です。
原子がなければ、分子もできません。
分子がなければ、水も岩石も鉱物もできません。
つまり、この時点の宇宙は、まだ地球を作るには早すぎる状態でした。
第3章 約38万年後、宇宙で最初の原子が生まれた
宇宙がさらに膨張して冷えると、電子が原子核に結びつけるようになります。
この時期を、宇宙論では「再結合」と呼びます。
NASAは、ビッグバンから約38万年後、宇宙が十分に冷えたことで、原子核が電子を捕まえられるようになり、宇宙が透明になったと説明しています。(NASA Science)
それ以前の宇宙では、電子が光を何度も散乱させていたため、光は遠くまでまっすぐ進めませんでした。
しかし、電子が原子核に結びついて原子になると、自由に飛び回る電子が減ります。
その結果、光が宇宙を進めるようになりました。
このとき、ようやく宇宙には安定した原子が現れます。
主役は、水素原子とヘリウム原子です。
しかし、水素とヘリウムだけでは、地球は作れません。
水素は水の材料になります。
ヘリウムは宇宙には多いですが、地球の岩石や生命の主役ではありません。
地球を作るには、酸素、ケイ素、鉄、マグネシウム、炭素など、もっと重い原子が必要です。
では、それらの原子はどこで生まれたのでしょうか?
続きを見てみましょう。
第4章 星は、重い原子を作る「元素工場」だった

宇宙に水素とヘリウムの原子が生まれると、やがて重力によってガスが集まり始めます。
密度の高い場所では、ガスがさらに集まり、中心部の温度と圧力が高くなります。
そして、ある段階を超えると、中心で核融合が始まります。
こうして星が生まれるのです。
星の中では、水素がヘリウムへ変わります。
さらに星の進化が進むと、ヘリウムから炭素や酸素が作られ、より重い元素も作られていきます。
NASAの解説でも、星は水素をヘリウムへ核融合し、その後、炭素や酸素などより重い元素を作り、鉄やニッケルに至るまでの元素合成が進むと説明されています。(cosmicopia.gsfc.nasa.gov)
ここで、ようやく地球の材料が見えてきます。
- 炭素
- 酸素
- ケイ素
- マグネシウム
- 鉄
これらは、地球の岩石、大気、水、生命の材料になる原子です。
たとえば、地球の岩石には酸素やケイ素が多く含まれます。
地球の中心部には鉄やニッケルが多くあります。
私たちの体には炭素、酸素、水素、窒素などが欠かせません。
つまり、地球の材料の多くは、最初から宇宙にあったわけではありません。
星の内部で、長い時間をかけて作られたものなのです。
第5章 星の死が、原子を宇宙へばらまいた
ただし、星の中で重い原子が作られただけでは、地球にはなれません。
なぜなら、その原子が星の内部に閉じ込められたままでは、次の惑星の材料になれないからです。
材料は、宇宙空間へ出る必要があります。
そこで重要になるのが、星の死です。
大質量の星は一生の終わりに激しい爆発を起こすことがあります。超新星爆発です。
このような爆発によって、星の内部で作られた元素は宇宙空間へばらまかれます。
また、金やプラチナのような非常に重い元素については、中性子星合体のような激しい天体現象も重要な候補です。
NASAは、2017年に観測された中性子星合体が、金やプラチナなどの重元素を作り出す現象と関係していると説明しています。(NASA Science)
ここで大切なのは、星の死が単なる終わりではないということです。
星が死ぬことで、内部にあった原子が宇宙へ放たれます。
そして、その原子たちは、次の星や惑星の材料になります。
つまり、地球は一世代目の宇宙から直接できたのではありません。
過去の星が生まれ、燃え、死に、その残骸が宇宙に広がり、そこから次の材料が集まってできた惑星なのです。
第6章 原子は分子になり、宇宙のチリになった

ここまでで、地球に必要な原子が宇宙にそろいました。
しかし、原子があるだけでは、まだ地球にはなりません。
原子はまず、分子や小さな固体の粒へと変わっていきます。
たとえば、酸素と水素が結びつけば水の分子になります。
炭素と酸素が結びつけば、一酸化炭素や二酸化炭素になります。
ケイ素や酸素、マグネシウム、鉄などが結びつけば、鉱物のもとになる物質ができます。
宇宙空間には、ただのガスだけでなく、非常に小さな固体の粒も存在します。
これが宇宙のチリです。
NASAは、星から流れ出たガスが冷えると、炭素、窒素、酸素、ケイ素、鉄などが分子を作り、それがチリ粒子の種になると説明しています。(NASA Science)
ここが、地球誕生を理解するうえで非常に重要です。
原子が、いきなり惑星になるわけではありません。
流れはこうです。
原子
↓
分子
↓
鉱物の小さな粒
↓
宇宙のチリ
↓
小石のようなかたまり
↓
微惑星
↓
惑星
つまり、地球は「原子の集まり」ではありますが、原子がそのまま集まっただけではありません。
原子が結びつき、分子になり、鉱物になり、チリになり、それらが何度もぶつかりながら少しずつ大きくなっていった結果です。
地球は、宇宙にばらまかれた原子が、少しずつ「かたち」を持っていった結果なのです。
第7章 約46億年前、太陽系の材料が集まり始めた

約46億年前、宇宙空間にあったガスとチリの雲が、重力によって縮み始めました。
NASAは、太陽系は約46億年前、星間ガスとチリの濃い雲から形成されたと説明しています。
雲が重力で崩壊し、回転する円盤状の構造、つまり太陽系星雲ができたとされています。(NASA Science)
中心には多くの物質が集まり、やがて太陽になります。
一方で、中心に集まりきらなかったガスやチリは、太陽の周囲を回る円盤として残りました。
この円盤の中で、地球の材料が集まり始めます。
最初は、目に見えないほど小さなチリです。
そのチリがぶつかります。
くっつきます。
またぶつかります。
さらに大きくなります。
やがて、チリは小石のような粒になり、さらに大きな岩のかたまりになります。
このようにしてできた、惑星のもとになる小天体を「微惑星」と呼びます。
微惑星は、互いに衝突しながらさらに成長していきます。
この衝突は、静かな合体ではありません。
巨大な岩のかたまり同士が、ものすごい速度でぶつかるような出来事です。
それでも、長い時間の中で、物質は少しずつ大きなかたまりへと成長していきました。
その結果、太陽の周囲には、水星、金星、地球、火星のような岩石惑星が作られていくのです。
第8章 地球は衝突しながら大きくなった
地球は、一度で完成したわけではありません。
小さな天体が集まり、何度も衝突しながら大きくなっていきました。
この過程を「集積」と呼びます。
集積が進むと、地球はどんどん大きくなります。
大きくなるほど重力も強くなります。
重力が強くなると、周囲の物質をさらに引き寄せます。
すると、また衝突が増えます。
こうして、成長は加速していきます。
ただし、衝突のたびに大量の熱が生まれます。
さらに、地球内部には放射性元素の崩壊による熱もありました。
そのため、生まれたばかりの地球は、現在のような安定した青い惑星ではありません。
表面は高温で、岩石が溶けたような状態だったと考えられます。
この段階の地球は、生命が住める場所ではありません。
海も、緑も、穏やかな大気もありません。
あるのは、衝突と熱によって作られた、若く不安定な惑星です。
第9章 重い鉄は沈み、軽い岩石は外側に残った
地球が高温で溶けた状態になると、内部で大きな変化が起きます。
物質が重さによって分かれ始めるのです。
鉄やニッケルのような重い金属は、地球の中心へ沈んでいきます。
一方で、ケイ酸塩鉱物のような比較的軽い岩石成分は、外側に残ります。
このようにして、地球の内部には層構造ができました。
- 中心には核
- その外側にはマントル
- さらに外側には地殻
NASAも、地球は中心核、岩石質のマントル、固体の地殻を持つ岩石惑星だと説明しています。(NASA Science)
この変化は、地球が「ただの岩のかたまり」から「内部構造を持つ惑星」へ変わった重要な段階です。
もし地球の内部で物質が分かれなければ、現在のような地球にはなっていなかったかもしれません。
地球の中心に鉄を多く含む核があることは、磁場とも関係します。
地球の磁場は、太陽から飛んでくる高エネルギーの粒子から地球を守る働きをしています。
つまり、鉄が中心に沈んだことは、単なる材料の並び替えではありません。
地球が長い時間、表面環境を保つうえでも重要な意味を持っていたのです。
第10章 水と大気が加わり、地球は「生命の舞台」へ近づいた
地球ができたあと、表面は少しずつ冷えていきます。
冷えることで、溶けていた岩石は固まり、地殻ができます。
さらに、地球内部からは火山活動などによって、水蒸気、二酸化炭素、窒素などの気体が放出されたと考えられています。
これらは、初期の大気の材料になります。
また、水の由来については、地球内部から出てきた水蒸気だけでなく、小天体や隕石によってもたらされた可能性も研究されています。
ここでは、細かい説の違いよりも、流れを押さえることが大切です。
最初の地球は、熱く、乾いた岩石のかたまりに近い状態でした。
しかし、冷却が進み、水蒸気が凝結し、液体の水が安定して存在できる条件が整うと、やがて海が形成されます。
水は、ただの物質ではありません。
多くの分子を溶かし、運び、反応させる場になります。
生命の誕生を考えるうえで、水は非常に重要です。
地球が生命を生んだというより、まず生命が生まれうる物質的な舞台が整っていったということが重要なのです。
原子があり、分子があり、鉱物があり、水があり、大気がある。
その組み合わせが、地球を単なる岩石惑星ではなく、生命の舞台へと近づけていきました。
生命の誕生については、下記記事にまとめているので、合わせて見ていただけると嬉しいです。

まとめ 地球とは、宇宙で育った材料の集合体である
ここまでの流れを整理してみましょう。
最初の宇宙には、地球の材料はありませんでした。
宇宙が冷えることで、まず水素やヘリウムの原子核ができました。
その後、電子が原子核に結びつき、原子ができました。
しかし、水素とヘリウムだけでは地球は作れません。
炭素、酸素、ケイ素、鉄などの重い原子は、星の内部で作られました。
星が一生を終えると、その材料は宇宙空間へばらまかれました。
ばらまかれた原子は、分子になり、鉱物の粒になり、宇宙のチリになりました。
そして約46億年前、そのガスとチリが集まって太陽系が生まれました。
太陽の周囲に残った材料は、衝突と合体をくり返し、微惑星となり、やがて地球になりました。
つまり、地球は一つの場所で一気に作られたものではありません。
宇宙の始まり
↓
星の誕生
↓
星の内部の核融合
↓
星の死
↓
宇宙のチリ
↓
太陽系の円盤
↓
微惑星の衝突
↓
地球内部の分化
↓
水と大気の形成
これらがつながって、今の地球があります。
そう考えると、地球はただの「足元の惑星」ではありません。
宇宙が長い時間をかけて物質を育て、その材料が集まってできた場所なのです。
138億年前の宇宙の誕生から46億年前の地球の誕生を原子をベースに見てきましたが、いかがでしたでしょうか?
言ってしまえばただの物理現象かもしれません。
しかし、私にはそれがとても神秘的なように感じます。
もし138億年の歴史の中で、少しでもボタンを掛け違えたら私たちは今存在しないかもしれないのです。
次回は生命の誕生を、同じく原子にフォーカスを当てて見ていくのでぜひ見ていただけると嬉しいです。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
ぜひ晴れた日の夜に星空を見上げてみてください。
今までよりも神秘的に感じるかもしれません。
もっと深く学びたい方へ
絵や写真があると理解が深まるので、興味を持った方はぜひ本や動画を見てみると理解が深まると思います。
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参考にした主な情報源
- NASA:宇宙誕生後、約38万年で原子が形成され、宇宙が透明になったこと (NASA Science)
- NASA:ビッグバン後の初期元素合成で水素・ヘリウムなどが作られたこと (cosmicopia.gsfc.nasa.gov)
- NASA:星の内部で炭素・酸素・鉄などが作られること (cosmicopia.gsfc.nasa.gov)
- NASA:中性子星合体と金・プラチナなど重元素の形成 (NASA Science)
- NASA:星間ガスとチリから太陽系が形成されたこと (NASA Science)
- NASA:地球が中心核、マントル、地殻を持つ岩石惑星であること (NASA Science)

